午前9時45分
俺は、台所から流れてくるモカの香りで目を覚ました
が俺の部屋に泊まるようになって、3度目の朝だ
が俺の腕の中で眠ったのは2度目

柔らかな朝の光に包まれた俺の部屋
気だるい身体を起こし階下へと降りると
台所でが朝ご飯の支度をしていた

「珪・・・おはよう」
「・・ん、おはよ」

まだ照れくさい気がするのは俺だけなのか・・・
の頬は、普段通りで、少しはにかんだ微笑をくれた

器用に包丁を扱って、玉ねぎを刻む
眺めていると、みるみるうちにの瞳から
涙が零れ落ちてゆく

?・・泣いてる・・?」
「だって、玉ねぎがー、」
「玉ねぎで・・・泣くんだ」
「当たり前でしょ、しかも包丁切れないし・・・もう涙涙よ」
「・・・泣いてるけど・・笑ってるんだ」
「・・何それ、珪も泣きなさい!」

はそう言うと、刻んだ玉ねぎを俺の鼻っ面に持ってくる
ネギ・・・の香り??
・・・あ、本当だ
目玉が・・・はは、泣くんだ玉ねぎって

と俺
二人で泣き笑いして、ぐちゃぐちゃの顔のまま、俺はを抱きしめた
の持っていた包丁をまな板に置かせて俺のほうを向かせ
泣いてる顔のまま、キスをする

「珪は、キスが好き?」
「大好き・・・でも」
「でも?」
「好きなのはキスじゃなくて・・・おまえ」
「・・・もうっ、珪は・・・恥ずかしいから・・そんな事言うと」
「照れてるけど・・・おまえも俺の事好きだろ?」
「・・・ん・・好きよ」

の言葉を受け取ると、俺はもう一度大好きなにキスをする
重なった唇から甘い吐息が漏れる
・・、このままだとベッドに行きたくなる・・・
ん?
なんか、いい匂いがするけど、ちょっとヤバメの・・・

・・・なんか、焼いてる?」
「・・・ん?あーっ!!パン焼いてた!!」

オーブンの中でコンガリを過ぎるほど黒くなったパン
・・・・おまえらしいな
全く、俺が目を離すと、すぐこれだ

「珪のせい!もう、キスなんかするから!」

え?俺のせいか?
の頬がプクっと膨れて俺を睨む目が真剣になる

「ご・・ごめん」
「もういいよ・・、あっち行って」

そんなに怒るなよ・・・
可愛い顔が台無し
でも、そんなふうに怒った顔も・・・俺のもの

が作ってくれた朝ごはんを食べ終わり
少し薄めのモカを飲んでいるときに
俺はひとつの事に気付いた

・・・、今日はこれから買い物・・行くぞ」
「え?そうなの?」
「ああ、午後4時からはスタジオだから・・」
「・・・そっか、バイトなんだ」

が少し寂しそうな顔をした

「ショッピングモールへ行こう・・・すぐ支度しろ」
    



休日のショッピングモールは、人で溢れていた
丁度バレンタインのチョコレートを売るコーナーが特設されていて
女の子が、色とりどりのラッピングをされたプレゼントを選んでいる

「もうすぐ・・・だね」
「・・ん?」
「バレンタイン・・」
「ああ・・・」
「珪は・・・何が欲しい?」
「俺はおまえからもらえるなら・・・何でもいい」
「他の人からは・・・?」
「・・・・受け取らないから」

俺がそう言うと、は安心したのか、嬉しそうに俺の腕を取った
俺もそんなふうに甘えてくれるが可愛くて・・嬉しくて、にキスしたくてたまらなくなる
でも、流石にここでは・・・無理だな

「ねぇ、何を買うのぉ?」
「おまえのもの」
「私の物?」

俺たちは、家庭用品を売っている店に入った
店の中には、可愛い食器や調理器具がたくさん揃っていた
俺は、の手を引いて、コーヒーカップのコーナーへいく

「おまえのカップ、買うから」
「・・?私のカップ?」
「ああ、コーヒー飲むのに、・・・おまえのカップが無いのは変だから」
「・・珪」
「箸も・・・カップも、それと包丁も・・・」
「珪の家に・・・私の物・・」
「ああ、歯ブラシも・・それから・・」
「・・・嬉しい」

がコーヒーカップを手にとって、嬉しそうに選び始める
俺は、そんなの笑顔を見ているだけで
幸せだって・・・感じる

が選んだのは、ディズニーのくまのプーさんが描かれたマグだった

「これにする!絶対これがいい」
「可愛い・・な」
「うん、私・・プーさん大好きなんだもん」
「・・・じゃ、なんでもプーさんにしよう」
「えへ、珪はグーフィーを使ってね」
「え?お、俺はグーフィー?」
「うん♪」

プーさんのマグ、プーさんの箸、プーさんの歯ブラシ、プーさんのスリッパ
プーさんの物で、かごがいっぱいになってゆく
そして、同じように、グーフィーの物も、どんどんとかごに放り込まれる

本当に可愛いな・・
おまえって・・・まるで子供みたいなとこがあって
それでいて、普段は先生みたいに口うるさくて
俺に、昼寝するなとか
ちゃんと勉強しろって言ったりする
おまえのそばに居ると
俺はどんどん変わってゆくんだなって・・・思う

「珪?またぼーっとしてるよ」
「・・ん?」
「いつもの調子だね〜、珪がぼんやりしてる時は、眠いのかな?」
「・・・・ん・・・、内緒」

悪戯っぽく俺の目を覗き込むが可愛い
俺・・・、バイト行くの嫌だな
全く、何だって、折角の休みにバイト・・・くそっ

「珪!時間なくなるから、買い物急ごうよ」
「・・ああ」

俺は両手にいっぱいの「のものと俺のもの」を抱えている
この重みの分以上
俺たちはこれから愛し合ってゆく
おまえの物で家中が溢れたら
今以上、もっと会いたくなる・・・だろうけど
きっと、来てくれる、そう信じてる




END




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